本を作る人たち全員を応援する総合認証サービス

著者や訳者に正当な賃金や健全な労働条件を保証しつつ、同時に読者や版元や書店を含むすべての当事者にとって利益を生むようなシステムはあるだろうか。この問いかけへの答えが、「本のフェアトレード」です。

本のフェアトレードでは、「フェアな報酬」「フェアな労働量」「フェアな意思疎通」の3つの条件をクリアした本に「フェアトレード認証」を付与し、著者・訳者の待遇の改善に力を入れている版元の取り組みを可視化しています。

このシステムからは、以下の利益が期待できます。

1. 読者への利益

本が健全な条件のもとで作られたかどうかを判断するのは、一般読者にはなかなか難しいものです。フェアトレード認証の本を買うことで、「自分は著者や訳者の待遇の改善に貢献した」「優良な条件のもとで制作された、高品質な本を入手できた」という風に、手もとの本の価値が可視化・具体化されます。

2. 版元・書店への利益

認証システムを利用することで、版元や書店は読者へ向けて自社の取り組みをアピールできるようになります。「著者・訳者の待遇改善に力を入れているならば、私は貴社の本を選びたい」と思ってくださる読者も少なくないはずです。また、優良な制作環境を可視化することで、優秀な著者・訳者が自社と仕事をしてくれるようになるというメリットも見逃せません。

3. 著者・訳者への利益

現在の出版業界では、多くの有能な著者や訳者が、生活できない[*]賃金や条件を受け入れるか、本作りを諦めるかという、不毛な二者択一を迫られています。優良な待遇を「付加価値」として認めることで、フェアトレード認証は本の価値を高めてくれます。また、より多くの版元が認証取得を目指すようになれば、著者・訳者の待遇が底上げされ、本の執筆や翻訳が持続可能になります。

4. 社会への利益

著者や訳者を含む制作陣へ優良な条件が保証されると、本の内容に集中してじっくりと作品を作る余裕が生まれます。その結果、高品質の作品が読者の手に渡ります。そうした本がより広く読まれるようになれば、人々の教養や感性にも磨きがかかり、社会的なレベルでも様々なプラスの効果が生じます。

[*] ここで言う「生活できない」とは、時給換算した場合に法定最低賃金を下回るような報酬、週7日のフルタイム労働などの過労を要するような作業量やスケジュール、不払い残業に相当するような追加の無償労働といった条件や、やりがい搾取に相当する条件を含むことを指します。

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申し込む

書籍が本のフェアトレード認証を受けるためには、次の条件を満たす必要があります。

1.
フェアな報酬

原稿料として、契約段階で著者または訳者に下記の金額以上の文字単価(またはワード単価)が保証されている。

(契約が結ばれた年の全国最低賃金 × 1.7) ÷ 375文字 [または150ワード]
→早見表で確認!

2.
フェアな労働量

1営業日3000文字(または1200ワード)、週当たり1万5000文字(または6000ワード)を上限に納期が設定され、その納期が納品日まで守られている。また、著者または訳者の意志に反する追加労働が奨励されていない。

3.
フェアな意思疎通

著者または訳者が、具体的な不利益を被る言動やハラスメントにあたる言動を、制作関係者から受けていない。

※認証は無料です。訳書の場合、原著者の待遇は審査対象に含まれません。認証条件の詳細はこちらをお読みください。

申請フォーム

※認証過程でみなさまからいただいた情報は、お申し込みいただいた本の認証以外の目的では使用せず、また第三者との共有も一切行いません。

認証完了までの流れ

STEP 1: 申請
認証条件を満たすと思われる書籍(刊行予定も可)を、著者または訳者本人が申請してください。もし複数人の著者または訳者がいる場合は、全員について条件が満たされている場合に、代表者が申請を行ってください。

STEP 2: 審査
審査のために、本のフェアトレードから追って申請者へメールをいたします。その後、担当者が申請内容の確認のために15分ほど申請者さんとビデオ通話をし、認証条件が満たされていることを確認します。

STEP 3: 認証
審査を通過した書籍へ「フェアトレード本」の認証が行われ、制作関係者には認証マークの使用が許可されます。認証の確認は申請者へメールにて行われます。認証済みの書籍の情報が当ウェブサイトへ掲載されます。

認証された本

パーパス・ドリヴン型ビジネス いま世界が求める、倫理的な企業のかたち

発行日:2023年05月13日
発行元:Asia Pacific Publishing Hub

制作チーム

ポール・ハーグリーヴス (著)
廣瀬 麻微 (訳)

内容紹介

企業は利益というただ1つのボトムラインのみを追い求めていればよいのか? よりよい社会を実現するためにこそ、ビジネスを利用できるのではないか?

イギリスの食料品卸売会社、コッツウォルド・フェアの経営者ポール・ハーグリーヴスが試行錯誤の末にたどり着いたのは、「人々」を生かし、「環境」を守り、「利益」を出し、「あなた自身」も大切にする、 4つのボトムラインを同時に追求する倫理的な企業のかたちだった。

近年注目を集めている「パーパス」を重視する企業を経営するとは、どういうことなのか。仕事を介して人が自己実現する社会を支えるために、企業に何ができるのか。世界をよりよい方向へ変えるために、企業はいまどう変わるべきなのか。

Bコープ認証企業の経営者である著者が、パーパス・ドリヴン型ビジネスの姿を成功も失敗も含め、ありのままを正直に語る。

目次

序文
はじめに

第1章 世界を変える
1 労働の本質
2 自分自身を深く見つめなおす
3 世界変革の準備期間
4 世界の変革をはじめる
5 ビジネスは世界を変えられる

第2章 経営を学ぶ
1 よい経営者とは
2 ふさわしい人材とは
3 崖っぷちに指先でしがみつく
4 第六感に従え

第3章 人々のために
1 ワーク・ライフ・バランス
2 家族や同僚との結びつき
3 よい経営とは
4 リーダーシップにおけるジェンダー・バランス
5 サプライヤーとの協働関係
6 顧客との協働関係
7 競合他社との協働関係
8 助言し、助言される

第4章 環境のために
1 グローバルな視点
2 アフリカへ
3 地球の悲鳴に耳を傾ける
4 地域社会に根ざしたビジネス
5 ビジネスと政治

第5章 利益のために
1 資本主義は善か、悪か
2 パーパスを届けるストーリーテリング
3 多世代が共に働く組織づくり
4 パーパス・ドリヴン型企業への投資

第6章 あなた自身のために
1 個人の変化
2 ビジネスの場で感情を解き放つ
3〈生きがい〉を見つける
4〈生きがい〉から人を遠ざけるもの
5 達成感
6 信じた道を突き進むために
7 因果応報

終わりに
1 夢を持ち、大志をいだく
2 Bコープ運動

引用文献
世界の変革を進めている企業・団体リスト
謝辞
著者紹介


君との通勤時間

発行日:2022年12月28日
発行元:KADOKAWA

制作チーム

林珮瑜(著)
余惟(写真)
楊墨秋(訳)

内容紹介

台湾発人気ドラマ「We Best Love」の脚本を手掛けた林珮瑜原作のオフィスBL(ボーイズラブ)。イラストの代わりに実写の写真が50枚以上収録された新感覚な小説です。爽やかで優しい味わいの一品となっております。


英語で読む広島

発行日:2017年07月26日
発行元:IBCパブリッシング

制作チーム

西海コエン(著)
大越正浩(訳)

内容紹介

語彙レベル別にリライトされた英文リーダーである「ラダーシリーズ」。

その「スペシャルエディション」は、日本の代表的な都市・観光地を紹介するシリーズになっており、その中のひとつがこの1冊。

日本人にとっては修学旅行先としてもなじみ深い広島を、やさしい英語で解説しています。世界にその名を知られ、外国人観光客も年々増加している”Hiroshima”の歴史と今を英語で伝えるための格好の書籍になっています。

原文は日本文化をアメリカに紹介する作品を多数執筆している西海コエン氏。その原文を広島で生まれ育った翻訳者が翻訳しました。語彙レベルは英検準2級程度。中〜高校生レベルのリーダー教材としてはもちろん、観光ガイドなどのための資料としても使える内容になっています。

目次

1. What is Hiroshima?
2. History of Hiroshima
3. The Real Face of Hiroshima


結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジー

発行日:2023年04月30日
発行元:『結晶するプリズム 翻訳クィア SF アンソロジー』編集部
協賛:VG プラス合同会社

制作チーム

ジェニー・ カッツォーラ(著)
イン・イーシェン(著)
ナディア・ションヴィル(著)
ワニニ・キメミア(著)
ゲイブ・アタグウェウィヌ・カルデロン(著)
岸谷薄荷(訳)
善本知香(訳)
村上さつき(訳)
吉田育未(訳)
紅坂紫(編、訳)
井上彼方(編)

内容紹介

『結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジー』は、「クィア」をテーマに、北米・アフリカ・アジア・ヨーロッパ・カリブ海と世界の5つの地域から集めたSF短編小説を収録したアンソロジーです。

アセクシュアルでデミロマンティックの狼男の物語「パーティトーク」、ジャングルでの修行生活を通して自らが同性愛者であることに気がついていく島国の王子の物語「鰐の王子さま」、父権制社会を打倒しようと立ち上がるレジスタンスたちの物語「ガラスの天井」、植物に憧れる植物学者を通してジェンダーユーフォリアを描いた「夕焼けのブルース」、体の自由に体に浮き上がる模様によって物語を語り継ぐツースピリットの物語「ANDWÀNIKÀDJIGAN」、多様な5編のクィアなSF短編小説をお楽しみください。

また、『結晶するプリズム 翻訳クィアSFアンソロジー』は、プライド月間に無料でクィアなSF短編小説を読めるようにしたい、ということを目標に始まったアンソロジーです。収録作品はすべて、オンラインSF誌Kaguya Planetにて、プライド月間の一ヶ月間無料で公開されます。

翻訳者や作品探しを担ってくださった皆様とは、プライド月間に無料で公開するという性質上、①できるだけ様々なジェンダー・セクシュアリティの登場人物の作品を収録する、②エンパワメントされる作品を選ぶ、という二点を目標としたいということを共有しながら、アンソロジーの作成を進めました。そして作品の無料公開と関係者への適切な謝礼の支払いを両立させるため、クラウドファンディングで資金の一部を集めました。

目次

ジェニー・カッツォーラ「パーティトーク」(岸谷薄荷訳)
イン・イーシェン「鰐の王子さま」(紅坂紫訳)
ナディア・ションヴィル「ガラスの天井(トワティアンヴェア)」(善本知香訳)
ワニニ・キメミア「夕焼けのブルース」(村上さつき訳)
ゲイブ・アタグウェウィヌ・カルデロン「ANDWÀNIKÀDJIGAN(アンドワニカドジガン)」(吉田育未訳)
あとがき
編者・翻訳者らプロフィール

仲間たち

「本のフェアトレード」のチームです。現在、作業協力者を大募集しております。ご興味ある方は、連絡フォームよりお問い合わせください。

金原瑞人

1954年岡山市生まれ。法政大学教授・翻訳家。訳書は児童書、ヤングアダルト小説、一般書など600点以上。訳書に『不思議を売る男』『青空のむこう』『国のない男』『月と六ペンス』『彼女の思い出/逆さまの森』『何かが道をやってくる』『小さな手 ホラー短編集4』など。エッセイ集に『翻訳はめぐる』など。日本の古典の翻案に『雨月物語』など。ウェブサイト

久保田祐子

1961年生まれ。横浜市在住。旅行業界勤務などを経て、英日/日英の翻訳を本格的に始めて約25年。「ヤング・ギター」誌、「キーボード・マガジン」誌などに携わり、共訳書に『ボブ・ディラン 全年代インタビュー集』など、訳書に『チャーリー・ワッツ公認評伝 人生と時代とストーンズ』などがある。現在は各種洋画パンフレットの翻訳が大半を占める。

栗原俊秀

1983年生まれ。翻訳家(おもにイタリア語)。訳書にジョン・ファンテ『塵に訊け』(未知谷)、マヌエレ・フィオール『秒速5000km』(マガジンハウス)、アンドレア・バイヤーニ『家の本』(白水社)など。近年はイタリア・コミックの翻訳に精力的に取り組んでいる。カルミネ・アバーテ『偉大なる時のモザイク』(未知谷)の翻訳で、須賀敦子翻訳賞、イタリア文化財・文化活動省翻訳賞を受賞。

永盛鷹司

1991年生まれ。翻訳家。主な訳書に『暗闇の効用』(太田出版)、『家庭の中から世界を変えた女性たち アメリカ家政学の歴史』(東京堂出版)など。また、フリーランス編集者として「クーリエ・ジャポン」などで記事の編集、翻訳、執筆もおこなう。

早川健治

1989年生まれ。ダブリン在住の翻訳家。哲学修士。CplとGoogleで人材あっ旋担当者として働いた後、独立して現職。和訳にチョムスキー&ポーリン『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』(2021)、バルファキス『世界牛魔人』(2021、いずれも那須里山舎)など、英訳に多和田葉子『Opium for Ovid』(Stereoeditions)。一般向け配信番組「フィネガンズ・ウェイクを読む」主催者。ウェブサイト

枇谷玲子

1980年、富山県生まれ。2003年、デンマーク教育大学児童文学センターに留学。2005年、大阪外国語大学(現大阪大学)卒業。北欧書籍の翻訳紹介を行っている。主な訳書に『キュッパのはくぶつかん』(福音館書店)『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『デジタルおしゃぶりを外せない子どもたち』(子ども時代)など。

お便り

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